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黒田卓也 / ライジング・サン / TYCJ60050 / ユニバーサル / 2,300円
『ライジング・サン』は、黒田卓也のブルーノート・デビューを飾るのにふさわしいアルバムになりそうだ。黒田は、ボーカリストであるホセ・ジェイムズのバンドでの際立った存在感でここ数年知られる、気鋭のトランペッターでありコンポーザーである。
『ライジング・サン』で黒田は、本作でジェイムズの素晴らしいバンドを率いて録音に挑んだ。バンドにはキーボードにクリス・バウアーズ、エレクトリックベースにソロモン・ドーシー、ドラマーにネイト・スミス、トロンボーンにコーリー・キング、そしてジェイムズがーいつもと違ってマイクの前ではなく、ガラス越しのプロデューサーの椅子に座ってー参加している。(ただしロイ・エアーズの名曲"Everybody Loves The Sunshine"の瞑想的なカバーではジェイムズがボーカルをとっている)
この33歳の日本生まれでブルックリンに拠点を置くミュージシャンである黒田は、ジェイムズのホーン・セクションに定着しただけでなく、自身のバンドを率い、セルフ・プロデュースで過去3作のアルバムをリリースしている。
ジェイムズのブルーノート・デビュー作である"No Beginning No End"のツアーにサポートとして参加する傍らで、黒田はジェイムズに自身の新作のいくつかを聴かせていた。ジェイムズはそれを楽しんでいたが、一方でもっと黒田のプレイを聴きたいと思うようになり、それが今作をプロデュースするというアイデアに発展していった。ジェイムズは黒田に、もっとヒップホップやR&B色を際立たせるようすすめた。「リスナーの身体が動くような要素、それを必ず音楽に盛り込め。ホセはそう言ってたよ」黒田はそう回想する。
「卓也の音色は他にない。彼の音色のトーン、ぬくもり、そして特にその物語性のある歌心。これらにここ何年もインスパイアされてきた。彼の書く曲はソウルフルで、モダンで、ジャズとソウルや過去と未来の垣根を軽々と越えてしまうんだ。」ジェイムズは言う。
ドキドキするようなオープニングのタイトル・トラックを聴けばすぐに、その国際色豊かなアレンジは幅広いリスナーを惹きつけるだろう。スミスとドーシーは、刺激的なキーボードとホーンのメロディや質感の底に、感染性のあるアフロビートのグルーヴを横たえている。
「このアルバムの雰囲気を決める何かが欲しかったんだ。このグルーヴは、太陽が昇って世界に始まりを告げる、そんなことを想起させる。」黒田はこう説明する。
黒田が彼のキャリアのメタファーとして使うsun(太陽)、そしてその対としてアルバムタイトルに使われているsonはスペルが違うことに注意して欲しい。「太陽が昇るのを見るとき、ゆっくり昇っているように見える。僕のキャリアも同じで、ニューヨークに10年間いる。自分のキャリアがゆっくりだったとは言わないけれど、大きな成果が見えるようになるには時間がかかるんだ。」
アフロビートのリズムはこのアルバム全体を通して重要な役割を果たしている。このリズムは、黒田が6年間参加していた、ニューヨークを拠点に置くアフロビート・アンサンブル、Akoyaでの経験を反映している。アフロビートの魅力的なリズムは、血が騒ぐような"Afro Blues"へと駆り立てる。この曲で黒田は、都会を闊歩するような尖った音色を披露していて、クリフォード・ブラウンやマイルス・デイヴィスと並んで黒田が明らかに影響を受けていると思われるミュージシャンの1人であるリー・モーガンを彷彿とさせる。ベナン出身のギタリスト、リオーネル・ルエケは、ブルージーでありながら打楽器的でもあるソロとコードで、楽曲が持つリズムをより確固たるものにしている。
"Piri Piri"におけるほとばしり出るファンクは、また異なるアフリカのフレイバーを感じさせる。このタイトルは、スワヒリ語で胡椒を指すもので、ガーナや南アフリカ、ナイジェリアといったアフリカの国々で、チキンソースの主な材料として親しまれている香辛料のことだ。この曲で黒田はアルバムの中でも最もファンキーなソロを吐き出しているが、それはキングの艶やかなトロンボーン・ソロと、リズム隊が作り上げるしっかりとしたグルーヴで、うまく調和されている。
"Mala"は、有名なアフロキューバのDJマラに捧げた曲だ。DJマラは2012年、アンダーグラウンドでヒットとなった"Mala in Cuba"をリリース。このアルバムは黒田の大のお気に入りとなり、彼がより一層DJカルチャーを掘り下げるきっかけとなった。
鋭利でありスムースでもある独特なリズムの上に、黒田は80年代後半のマイルスを彷彿とさせる無駄のないトランペットの旋律を重ねている。
黒田はアップテンポの曲と同じように、幻想的な"Sometime, Somewhere, Somehow,"でバラードにも挑戦している。この曲は最近他界した彼の祖父に捧げられた曲だ。彼は自身のフリューゲルホルンとキングのトロンボーンを組み合わせて、スミスのタイトなバックビートのうえに漂うメランコリックなメロディーのユニゾンを作り出し、バウアーのアンバーな音色を際立たせている。
押さえつけたグルーヴに、 開放とミュートを交互に繰り返すトランペットをフューチャーした官能的な楽曲、"Call"は、さらにメランコリックだ。夏から秋への季節の移り変わりを見ているときに、このメロディーとダークなハーモニーが思い浮かんだ、と、黒田は話している。
このアルバムには、ロイ・エアーズの名曲"Everybody Loves The Sunshine". "Green And Gold"も収録されている。"Everybody--"ではパンチの効いたアプローチがとられていて、そのアレンジは、しばしば即興からスタートするジェイムズの"Park Bench People"でのライヴパフォーマンスから実際に生まれたものだ。黒田とジェイムズはそのアレンジをそのままに、ジェイムズの魅力的なバリトンヴォイスで紡ぎ出される時を超えたメロディーと歌詞を重ね合わせた。
黒田とジェイムズがアルバムに収録するカバー曲を探しているとき、黒田は彼が大好きなエアーズの楽曲"Green And Gold"をリメイクする機会を得る。この曲で黒田は、曲のペースを大幅に遅くすることで、リスナーが、彼の生き生きした音色やテンポの良いメロディーをゆっくりと楽しめるような手法をとっている。
黒田とジェイムズの付き合いは、10年前のマンハッタンのニュースクール大学時代に遡る。ジェイムズの在学中、黒田はすでに卒業していた。にもかかわらず、2人は共通の知り合いの大学四年時のピアノリサイタルで共演している。ジェイムズは黒田の演奏を気に入り、2010年の大学二年のときのアルバム"BlackMagic"に参加してくれるよう誘った。そのアルバムのなかの"Promise in Love"の作曲において、黒田は素晴らしい貢献を果たした。ジェイムズは後に、ライヴショウや"No Beginning No End"のレコーディングに黒田を抜擢。そのレコーディングでは、黒田がホーン・アレンジを書くことになった。
2003年の渡米前、黒田は神戸で育ち、トロンボーン奏者であった兄の後を追って中学生のジャズバンドに入った。日本にいる間、黒田は中学から大学のビッグバンドまで、12年間に渡ってバンドで演奏してきた。しかし彼が本当にジャズにのめり込んだのは、地元のジャズクラブで少人数で演奏するようになってからだった。「ビッグバンドは譜面通り演奏するだけで、即興がなかった。地元のクラブでたくさんのおじさんたちに囲まれて、本当に可愛がってもらったよ。」そう黒田は話している。
黒田は結局アメリカにやってきて、バークリー音楽院で初めて正式なジャズの勉強を始めることになる。「日本でジャズの先生というのを持ったことがなかった。それなのに、初めての音楽理論、耳のトレーニング、ジャズ・アンサンブルの授業を、生まれて初めて、しかも英語で受けることになったんだ。おかしくなりそうだったよ。でもその経験があって、ニューヨークにいきたいと思うようになったんだ。」
ジェイムズとの親密な関係性で、黒田は21世紀のモダン・ソウル・ジャズ・シーンにおける主要人物になりそうだ。『ライジング・サン』は、その新しい夜明けを告げるアルバムだ。
(海外プレスリリースより)

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